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人を愛し、人に愛され、94歳まで矍鑠として凛とした人生を終えた 一橋大学名誉教授・板垣與一先生の蔵書、資料、書簡、メモを保管し 「板垣與一文庫」として開設してから12年が経過した2017年9月から 研究所機能と社会事業部門を加えた 【板垣與一記念館】として再出発しております。 理論と実践として、地域に根差した「幼児~高齢者」までの緩やかな繋がりを 「ジジババこども食堂」を通して、人と人との温かいコミュニケーションを大切に 一過性ではなく、継続的に発展的に発信してゆけたらと、試行錯誤しながら模索中です。 板垣與一記念館:館長 宇佐見 義尚 拝 up date 2019.03.28 |
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2006年経済教育学会ニューズレターより引用 *・・恩師の群像2・・・* 板垣與一先生と私 宇佐見義尚 師弟関係において、「師の心構え」と「弟子の心構え」とは果たして どのようなものであろうか。 「師の心構え」とは、自分の持てる時間と労力を弟子に対して 惜しむことなくすべて与えることに尽きるのではないか、そう思えてならない。 弟子が、一本の自作の論説を持って師を尋ねれば、師は己のもてる全ての知識をもって 全力で添削をする。弟子が、研究テーマの選択の迷う時には、師はその弟子を 様々な研究会が学会やシンポジュウムに連れて行きそこに集う人々を紹介する。 弟子が研究に疲れて怠惰になっている時には、師はさりげなく自宅に呼んで 夕食を振る舞いながら、師が書店から取り寄せていた話題の最近著を貸し与える。 師が一ヶ月、二ヶ月の間自宅を空ける時には、弟子を自宅に住まわせて師の書斎、書籍 師の学問生活の全てをさらして、弟子がそこから何かを学ぶかに期待をかける。 弟子は、冬のコートを持っていないわけではない。 しかし、師は自分が愛用しているまだ新しい上等(カシミア100%)な 冬のコートを弟子に与え「これを着なさい」と言う。 弟子が師を尋ねる時、師は門灯を煌々とつけて弟子を待ち、 弟子が辞去する際には師は弟子を最寄の駅まで送り、帰りの切符を買って与える。 「弟子の心構え」とは何か。師が死の床に着いた時、師が延命措置を拒否して 水のみで一日を過ごせば、弟子もまたその日を水のみで過ごして師を思う。 師がいよいよそのときを迎えるとき、弟子は遠く離れた地での師の強固な意志を感じて 涙を流す。師を亡くした弟子は、師の学問業績を忠実に確定した上で、 その学問的課題を引き継ぎ発展させることを決意する。 その時弟子は、自分が飛翔するためにいまひとつ強力なエンジンを背負った心境になる。 以降、弟子の心の中に師は生き続けて共にあり、弟子が困難な事態に直面した時、 弟子は「師ならばどうするか」の絶対的判断基準を得ることになる。やがて、 その弟子の生命も終わるとき、弟子は師のそばで永遠の眠りにつきたいと願う。 師もまた、そうした心境によって師の師である中山伊知郎先生のそばに 墓地を移したに違いない。 (亜細亜大学) 板垣與一記念館:館長 宇佐見 義尚 拝 up date 2021.01.03 |
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